自然と人間との共存をテーマにした『もののけ姫』。
日本でも公開当初から話題になっていました。
コピーライターの糸井重里が描いた「生きろ。」というキャッチコピーもい印象深いものでした。
『もののけ姫』は日本のみならず、海外でも話題の作品です。
特に環境問題への意識が高い海外では、『もののけ姫』は深く人々の心に残っているようです。
それでは『もののけ姫』の海外の反応です。
『もののけ姫』の海外の反応
宮崎駿のスピリットのファン
宮崎駿の作品には、現代が抱える問題がテーマになっているいる事が多いです。
そこが子供だけではなく、大人もジブリアニメが大好きな理由の一つです。
宮崎駿は文明あまり好きではないようです。
彼はかつて、我々人間が原始の生活に戻ればきっとみんな気にいるだろう、そのような意味合いのことを言っていました。
『もののけ姫』では、産業化の弊害がいかに地球を殺しているかがよくわかります。
そして、その産業化の弊害は、常に現代の我々の手で産み出されているのです。
私はこの作品のファンではありませんが、政治的な意味合いも持つ宮崎駿のスピリットのファンです。
理解し合えないもどかしさ
『もののけ姫』には善も悪もありません。
絶対的な悪者も出てきませんし、絶対的な善人も出てきません。
ハリウッド映画のようなわかりやすい構図がないのです。
ですから、当然勝者もいません。
物語は基本的に、自然をめぐる人間同士の争いとして描かれています。
ところが、この作品には善vs悪の古典的な構図がないため、全ての人の理解を得られない可能性もあります。
私が『もののけ姫』に感じている魅力は、対立しているグループのそれぞれが悪人ではなく、しかしなかなか理解し合えないもどかしさにあります。
私たちは自然に対して、いかに自己破壊的であるかがよく分かります。
アシタカの目を通して自然を見る
それぞれ自分の立場でしか主張できないから、争いが生まれるのです。
そのなかで、何者でもないアシタカが周囲に翻弄されています。
私達は、そんなアシタカの目を通して作品を観ているのです。
様々な人間や動物が争いながら、それぞれの人間の視点や動物の視点で争いを見ることができるため、非常に楽しめました。
人間によって視点が異なり、動物によって視点が異なるため、部分的には考えが正しいように感じるが、違う部分では間違っているなど、様々な角度で楽しめます。
その争いの中で、ただ一人平和的解決を望むアシタカ。アシタカの目を通して、自然を守ると言う深いテーマを考えてみるのです。
何者でもないアシタカ
やはり多くの海外の人々が、善悪のはっきりとしないところに魅力を感じているようです。
この物語で私は、決して善悪がはっきりと存在しなかったことがとてもよかった。
ある側面が正しいとしたものは、別の側面では正しくなかった。
宮崎駿は、争いの全ての視点をわかりやすく伝えるためにキャラクターを配置しています。
森に住む動物たちの神がいて、産業主義の犠牲者がいる。
オオカミの王女であるサンがいて、部落の長であるエボシがいる。
とくにアシタカは、何者でもないからこそ、この争いの中で唯一何者の立場を持たず、最後まで調和を目指す。
そういった意味では、アシタカは自分の役割を大いに果たしたといえる。
アニメの声優が良かった
日本語の声優はとても豪華です。
『風の谷のナウシカ』のアシベルを担当している松田洋治がアシタカを担当していたり、サンの声は石田ゆり子が担当しています。
私は『もののけ姫』を、日本語のバージョンを字幕で観たため、英語の吹き替えのことは何も言えません。
しかし、日本語バージョンの方は声優はとてもいい仕事をしています。
神の声は荒々しく、それでいて聞き取りやすかったです。
種ごとに声に特徴があり、フィットしていました。私は一部のアニメの声のミスマッチにがっかりしていたため、『もののけ姫』ではとても満足して観賞できました。
テクノロジーは人類の終焉
やはりハリウッド映画との違いが際立っているようです。
『もののけ姫』を観ると、ハリウッド映画がいかに哲学的ではないのかがよく分かる。
映画の明らかなメッセージは、人類と自然の関係を表している。
しかし、その外側の層のさらに奥深くには、「正しいさvs間違い」、「良いvs悪い」、「自由vs閉塞」、「現実vs夢」、そして最も重要な「テクノロジー-未来vs農業-過去」の対比がみられる。
宮崎はテクノロジーを打ち負かすだけではなく、テクノロジーが自然だけでなく人類の終焉であることを描いている。
混乱を伝えるいい仕事
英語版の吹き替えも豪華です。
アシタカの吹き替えはビリー・クラダップで、アメリカの俳優です。
ジコ坊の声を担当したビリー・ボブ・ソーントンは、映画監督であり俳優でもあります。
プライベートではアンジェリーナ・ジョリーと3年間ほど結婚をしています。
この作品は英語の吹き替えで観ましたが、なかなか良いものでした。
とくに私は吹き替えの声がとても気に入りました。
だからこそ、英語版吹き替えの残念な点をいくつかあげます。
ビリー・クラダップはアシタカの声を担当していますが、当たり障りなく演じています。アシタカはワイルドで勇敢な男ではなく、家族を離れた普通の男です。
そのため、時々恥ずかしがり屋のように聞こえます。
ビリー・ボブ・ソーントンはジコ坊という名前の古い僧のかなり良い声でしたが、私が思うジコ坊の声とは少し違っていました。
これが意図したものかどうかは正確にはわかりませんが、ジコ坊は自分が何になりたいかわからないように感じました。
彼がいい人なのか、悪い人なのか、あるいは彼が何者なのかさえわかりません。
彼が修道士であるということは、彼が物事の精神的な側面を持つ人になることを意味すると思いますが、その一方で、彼は人間のすることにも反対しているようです。
彼は私にとって非常に混乱したキャラクターであり、ビリーは彼が何であるかについてその混乱を伝える良い仕事をしました。
おわりに
『もののけ姫』の海外の反応をご紹介しました。
- 宮崎駿のスピリットのファン
- 理解し合えないもどかしさ
- アシタカの目を通して自然を見る
- 何者でもないアシタカ
- アニメの声優が良かった
- テクノロジーは人類の終焉
- 混乱を伝えるいい仕事
などの声が聞かれています。
やはり古典的なハリウッドのような善悪の構図がないことが、海外で魅力とされているようです。